シラバス
- 目的・内容 例年春学期は、近現代日本の諸問題を扱った著作を読む。今期は、拙著「生きて帰ってきた男」を軸にしながら、戦前戦後の日本を扱った研究を読んでいきたい。拙著「生きて帰ってきた男」(岩波新書)は、1925年生まれの一人の都市下層民の人生のオーラルヒストリーである。この著作からは、戦前から戦争、戦後と高度成長を経た、経済・政治・社会などのさまざまな問題が、人間の人生に関わっていることがわかる。 この研究会では、この著作を前提としつつ、社会保障や商業、階層移動、戦後補償など、さまざまな専門的研究を読んでいく。個別の研究は実感がわきにくくとも、一人の人間のライフヒストリーと組み合わせることで、マクロな歴史がミクロな人生との関係が理解できるだろう。
- 参考文献リスト 野村實「雇用不安」(岩波新書)
- 目的・内容 例年、春学期の研究会は具体的問題や歴史的研究、後期は古典書籍を呼んで来た。2014年春学期の研究会では、戦後の政治・経済・社会の構造を学ぶという観点から研究書を読んでいきたい。平成の時代は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とよばれた昭和後期のシステムが、機能不全になっていった時代だった。この時代に生まれた学生にとって、現代の構造の起源を学ぶことは、現代と未来を見据えることになるだろう。
- 参考文献リスト 広田照幸「日本人のしつけは衰退したか」(講談社現代新書)
- 目的・内容 例年、春学期の研究会は具体的問題や歴史的研究、後期は古典書籍を読んで来た。2013年春学期の研究会では、「平成」を学ぶという観点から研究書を読んでいきたい。平成の時代は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とよばれた昭和後期のシステムが、機能不全になっていった時代だった。この時代に生まれた学生にとって、同時代を学ぶことは、現代と未来を見据えることになるだろう。
- 参考文献リスト メアリー・ブリントン「失われた場を求めて」(NTT出版)
- 目的・内容 例年、春学期の研究会は具体的問題や歴史的研究、後期は古典書籍を読んできた。2011年春学期の研究会では、「戦後史」を学ぶという観点から研究書を読んでいきたい。
- 参考文献リスト 前半の本のほうがわりあい身近な生活文化関係なので、とっつきやすい本で報告をすませたい人は早めに立候補した方がお得である。
- 参考文献リスト ポール・ウィリス「ハマータウンの野郎ども」(ちくま学芸文庫)
- 参考文献リスト 佐藤郁也「暴走族のエスノグラフィー」(新曜社)
2016年度
以前もとりあげた本だが、日本の階層構造を図式化した本として初回にとりあげる。
満薗勇「商店街はいま必要なのか」(講談社現代新書)
消費・労働・地域という視点から、小商店を含む流通史を描く。意欲のある人は新雅人「商店街はなぜ滅びるのか」(講談社新書)も併読するとよい。
野口悠紀雄「新版 1940年体制」(東洋経済新報社)
金融史をメインに、戦時総動員体制が戦後の基盤となったと主張。金融史により興味のある人は、池尾和人「開発主義の暴走と保身」(NTT出版)も併読すべし。
宮本太郎「福祉政治」(有斐閣)
日本の社会保障がどう成立し、どのような特徴を持っているかコンパクトに論じる。エスピン‐アンデルセンの研究の日本への応用版。
刈谷剛彦「階層化日本と教育危機」(有信堂)
教育格差の質的変化を歴史的に指摘した著者の代表作。10年以上前の本だが、この分野を確立した古典。
橋本健二「「格差」の戦後史」(河出ブックス)
戦後日本の「格差」を、統計データと通史的記述を中心に、エピソードなどを交えて描写。
本間義人「居住の貧困(岩波新書)
住宅政策と居住格差の問題を、通史を交えて描く。
吉川洋「高度成長」(読売新聞社)
経済学者による高度成長分析と歴史記述。この分野では古典。
加瀬和俊「集団就職の時代」(青木書店)
教育、交通、雇用などの接点としての集団就職を描いた佳作研究書。
原武史「団地の空間政治学」(NHKブックス)
高度成長によって出現した団地という住居空間が、どのように市民運動に結び付いたかを記述。
吉田裕「日本人の戦争観」(岩波書店)
戦後50年にわたる戦争観の変化を記述した通史。
栗原俊雄「シベリア抑留」(岩波新書)
シベリア抑留の基本的通史と、戦後の保障問題の経緯を描く。
朝日新聞取材班「戦後補償とは何か」(朝日文庫)
日本がアジア圏に与えた戦争被害と、その記憶を総攬する。
2014年度
参考書は政治・経済・地方・社会などの研究書であるが、入手しやすいように新書を中心に選んだ。研究会を通じて、戦後とはなんだったのか、今という時代は何かを、把握していきたいと思う。
歴史社会学の視点から、日本近代教育をあつかった古典的佳作。
新雅史「『東洋の魔女』論」(イースト新書)
1964年東京オリンピックで活躍した女子バレーボールから、労働史を描く。
野村正實「雇用不安」(岩波新書)
雇用問題を論ずる場合に基本となる、日本の雇用構造を描き出した古典。
濱口圭一郎「新しい労働社会」(岩波新書)
日本と西欧の雇用原理の違いから、未来の雇用形態を展望する。
新藤宗幸「教育委員会」(岩波新書)
日本の教育政策の硬直性を、政治と行政の構造から理解する。
新藤宗幸「行政指導」(岩波新書)
20年以上前の本だが、業界団体と行政の関係の構造を描き出した必読書。
平山洋介「住宅政策のどこが問題か」(光文社新書)
西欧やアメリカとの比較で、日本の住宅政策の構造と特徴を理解する。
本間義人「国土計画を考える」(岩波新書)
公共づけの地方政治の原型を、高度成長期以来の国土計画から探る。
井手英策「日本財政 転換の指針」
財政社会学の視点から、高度成長期から現代までの日本財政を解き明かす。
中北浩爾「現代日本の政党デモクラシー」(岩波新書)
平成の政治史から、日本の政治のあるべき姿を模索する。
薬師寺克行「外務省」(岩波新書)
2000年代外交史を、外務省の機能不全という観点から分析する。
久江雅彦「米軍再編」(講談社現代新書)
2000年代の日米防衛協議の実態から、防衛政策現場の手詰まりを描く。
毛里和子「日中関係」(岩波新書)
戦後日中関係史の古典的分析。
2013年度
参考書は担当者の編著である「平成史」(河出書房新社)を皮切りに、政治・経済・地方・社会・原発などの研究書である。研究会を通じて、戦後とはなんだったのか、今という時代は何かを把握し、発表を行なってもらう課題図書として、下記のものを選ぶことにした。まったく読めないような難解な本はない。なお、小熊英二編「平成史」(河出書房新社)は、全員読んでくること。とくに「総説」は履修時には必ず読んでおくこと。
なお、「平成史」の各章を報告担当する者は、下記の説明にある参考文献を必ず読み、その内容を踏まえて報告すること。これらの参考文献を、履修申告時の三冊に加えてよい。
アメリカ人の研究者による現代日本の若者事情調査。高校における就職状況調査から、現代日本をあぶりだす。社会調査研究の手法を学ぶ上でもよい。
貴戸理恵「教育」(「平成史」所収)
本ゼミ卒業生の先輩による、平成の教育史。この回を担当する者は、ファーロング/カートメル「若者と社会変容」(大月書店)を必ず読むこと。この本を「まとめ」提出に加えてもよい。
仁平典宏「社会保障」(「平成史」所収)
若手社会学者が独自の視点から整理する「平成の社会保障史」。この章を担当する者は、エスピン=アンデルセン「ポスト工業経済の社会的基礎」(桜井書店)を必ず読むこと。この本を「まとめ」提出に加えてもよい。
菅原琢「政治」(「平成史」所収)
平成の政治史を、選挙制度と世論調査の専門家が記述する。この章を担当する者は、菅原琢「世論の曲解」(光文社新書)および菅原琢「自民党政治自壊の構造と過程」(御厨貴「変貌する日本政治」勁草書房 所収)を読むこと。前者の本を「まとめ」提出に加えてもよい。
濱野智史「情報化」(「平成史」所収)
日本では数少ない、情報化と経済・社会の関係史。この章を担当する者は、橋元良明「メディアと日本人」(岩波新書)およびロバート・ライシュ「勝者の代償」(東洋経済新報社)を併読すること。後者の本を「まとめ」提出に加えてもよい。
池尾和人「開発主義の暴走と保身」(NTT出版)
「金融の戦後体制」の形成と崩壊の歴史。独自の視点から戦後の政治経済を支えたシステムを探る。野口悠紀夫「1940年体制」(東洋経済新報社)は、併読すると参考になる。
吉岡斉「新版 原子力の社会史」(朝日新聞出版)
日本の原子力の戦後史の定番。やや無味乾燥に映る記述だが、国際関係や核拡散の問題まで含めて記述している。日本の原発体制と、戦後社会の裏面を理解する必須本。
中澤秀樹「地方」(「平成史」所収)
平成の「地方史」を、原発立地自治体を調査した著作で知られる研究者が描く。この章を担当する者はサスキア・サッセン「労働と資本の国際移動」(岩波書店)を併読すること。この本を「まとめ」提出に加えてもよい。
白川一郎「自治体破産」(NHKブックス)
自治体財政問題から、日本の中央―地方関係の根本的見直しを唱える。中澤氏などとはまったく異なる視点だが、踏まえておくべき。
山下祐介「限界集落の真実」(ちくま新書)
人口動態および戦後経済の流れから、日本の全体配置と地域社会がどうなっているかを探る。
新雅史「商店街はなぜ滅びるのか」(光文社新書)
「商店街」という、1930年代に発明された人工社会が、いかに発展し、なぜ滅びつつあるか。日本の政治・経済・地域社会の縮図的描写。
永松伸吾「減殺政策論入門」(弘文堂)
「災害の戦後史」「阪神大震災の教訓」「災害復興の一般理論」という三つの側面をもつ、極めて興味深い著作。異なる視点からの経済学とも読めるが、日本の政治経済の特性もよくわかる。
山田良治「土地・持家コンプレックス」(日本経済評論社)
日本の「土地神話」「持家神話」の誕生を、理論的かつ国際比較の視点から語る。現代では持家信仰が全く時代錯誤になったこともわかってくる。
2012年度
近年、戦後史の研究が進んでいる。かつては歴史研究は戦前までで、戦後については占領期まで(憲法制定過程など)に限定されていた。しかし21世紀に入るころから、戦後史の研究が増加した。理由の一つは、「戦後」もようやく歴史になりつつあることだ。また戦後すでに65年が経過し、その「歴史」を語らずには現在を語れなくなった。またとくに冷戦終焉後、外国の日本研究者が日本の戦後を研究し、日本の研究がかえって遅れていることが感じられたためもある。
研究会では、戦後史研究の中でも、社会構造的なアプローチが含まれているもの、国際的な視点があるもの、できるだけモノグラフではなく通史的なものを選んだ。分野は国内政治・国際政治・経済・文化・社会など多岐にわたっている。研究会を通じて、戦後とはなんだったのか、そしてそれが今という時代をどう規定しているかを、把握していきたいと思う。
難波功士「族の系譜学」(青弓社)
「ユース・サブカルチャーズの戦後史」の副題を持つ。欧米の下層労働者文化研究に触発された社会学者による若者文化の戦後史。やや突込みが浅いが、学術書にはじめて触れる者にもとっつきやすい。
原山浩介「消費者の戦後史」(日本経済新聞社)
消費者運動を軸に、「消費者」の成立と、行政・企業との対立と自立、そして変容を描く。現代日本における「市民」イメージの形成史として考えても興味深い。
小熊英二「1968」(新曜社)
日本の「1968」、全共闘運動を扱った唯一の総合的研究。裏のテーマは「高度成長とは何だったのか」である。あまりに厚い本なので、とりあえず第1、2、5、9、14章と結論だけ読めばよい。
渡辺治編「高度成長と企業社会」(吉川弘文館)
高度成長を軸に、「企業社会」ができあがっていく様子を政治・経済・福祉など総合的観点から共著として描く。1970年代から80年代に、現在イメージされる「会社員と専業主婦の昭和日本」がどう作られたかがわかる。
斉藤淳「自民党長期政権の政治経済学」(勁草書房)
大部分が「政界人脈物語」でしかない政治史研究のなかにあって、ゲーム理論を駆使して自民党長期政権の最盛期と没落を構造分析した力作。単純化しすぎている感もあるが、有益な視点を与えてくれる。
橘木俊詔編「戦後日本経済を検証する」(東京大学出版会)
戦後経済史が総覧できるがっちりした本。かなり分厚い共著だが、吉川洋による戦後通史の第1章は必読。ほかに「労働」「家計」「国際貿易」「財政」などの章が参考になる。
アンドルー・ゴードン編「歴史としての戦後日本」(みすず書房)
アメリカ人研究者たちによる戦後日本の政治・経済・社会・思想の多面的分析。日本国内の視点ではない観点にはっとさせられる記述が多い。日程に夜が、上巻と下巻にわけて報告してもらうことも考える。
ジョン・ダワー「敗北を抱きしめて」(岩波書店)
ピュリッツァー賞受賞のベストセラー。敗戦後の日本の雰囲気と、アメリカと日本保守層の合作によって「戦後日本」の枠組みができあがった経緯を追う。読みやすい。
大嶽秀夫「再軍備とナショナリズム」(講談社学術文庫)
日本の政治学者の重鎮による「戦後日本の防衛観」の成立史。著者の意見に同意するかはともかく、ドイツとの比較で日本における特徴を描く図式は明快で踏まえておくべき視点。
マイケル・シャラー「『日米関係』とは何だったのか」(草思社)
アメリカ側からみた日米関係史。基本的に1970年代で終わっているが、日本側から見たのとはかなり異なり、冷戦という大きな枠からアメリカが日本を扱っていたことがわかる。
下斗米伸夫「日本冷戦史」(岩波書店)
日本のソ連研究者による、東アジアにおける中ソ関係・北朝鮮関係の枠からみた日本の戦後史。アメリカ側から見たのとはまったく別の視点から、「55年体制」が成立した経緯が浮かび上がる。
松岡完・広瀬圭一・竹中桂彦「冷戦史」(同文館書店)
冷戦の世界での流れと、日本での政治史を、平行して描く試み。55年体制の成立、高度成長、バブル崩壊、自衛隊海外出動などが、冷戦と世界の動きと連動していることに気づかされる。
カルチュラル・スタディーズの元祖的研究。イギリスの不良少年グループの、生々しく面白い聞きとり調査。一昨年の研究会でもとりあげたのだが、やはり読みやすく名著なので今回もとりあげることにした。フィールドワーク調査、移民コミュニティ研究、若者文化研究など、いろいろな分野の元祖といえる作品。とくに自分がフィールドワークをやってみたい者には、非常に参考になると思う。
参考図書としては、吉見俊哉編『カルチュラル・スタディーズ』(講談社メチエ)がいくらか役に立つ。
ゴフマン「スティグマの社会学」(せりか書房)
現象学的社会学やエスノメソドロジーとならんで、「日常社会の社会学」として一世を風靡した著者の著作。アイデンティティ分析やフィールドワークの視点の取り方などに、いまでも参考になる。マイノリティ研究や社会運動論などにも影響を与えた。那須嘉編『クロニクル社会学』(有斐閣)で一章割いて解説されている。
ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫ほか)
社会学史に必ず出てくる古典。近代化論、資本主義、宗教社会学、価値意識、近代化にともなうストレスなど、さまざまな問題を含む。関連図書として、新睦人ほか『社会学のあゆみ』(有斐閣)第1章、那須嘉編『クロニクル社会学』(有斐閣)第6章。
デュルケム『自殺論』(岩波文庫ほか)
これも社会学史の必読古典。「集団心性」という問題設定の元祖だとみなせば、アナール学派も構造主義もこれが出発点だともいえる。中央公論版の「世界の名著」ではていねいな解説が付されているが、新睦人ほか『社会学のあゆみ』(有斐閣)でも一章あてて解説されている。
マルクス『資本論』(岩波文庫ほか)
すべての社会科学が影響され、あるいはライバルとしていた作品。毎年とりあげているが、以下のすべての本を読む上で踏まえておかねばならない。今村仁司編「知の攻略シリーズ2 マルクス」(作品社)が参考になる。
ウォーラーステイン『新版 史的システムとしての資本主義』(岩波書店)
世界経済を語る際に欠かせないウォーラーステイン自身による、自己の研究と理論の要約本。読めばわかる内容なので、より深い興味を持った人は彼の具体的研究である『近代世界システム』などを読むとよいと思う。
ミシェル・フーコー「監獄の誕生」(新潮社)
現代の社会学・教育学・フェミニズム・文学批評・権力論・地域研究など、およそあらゆる分野で応用されているスーパースターの代表作。入門的解説書としては、久米博「現代フランス哲学」でも解説されているが、桜井哲夫「フーコー」(講談社)がいちばんだと思う。
シュムペーター「資本主義・社会主義・民主主義」(東洋経済新報社)
マルクスとはまったく違う視点から「資本主義の終焉」を論じた経済学者の著作。経済学の古典だが、社会学的視点から読んでも興味深い。参考図書多数。
ポランニー「大転換」(東洋経済新報社)
「経済人類学」という新たな視点を切り開いた古典。市場とは、資本主義とは、人類のいかなる地点から発生したのかが、あらためてわかる。
アレント「人間の条件」(ちくま学芸文庫)
古代ギリシャ政治思想から、マルクスをまっこうから批判した著作。古代の観点に立って、現代の価値観を根底から問い直す。川崎修「アレント」ほかが参考になる。
エスピン=アンデルセン「ポスト工業化経済の社会的基礎」(桜井書店)
福祉レジーム論を展開し、ポスト工業化社会論に欠かせないものとなった本。社会保障の観点から日本社会を論ずるうえでも欠かせない。社会学的経済学という観点からも読める。
ベック「危険社会」(法政大学出版局)
チェルノブイリ原発事故直後に、西独でベストセラーになった著作。マルクスやウェーバーの系譜に立ち、ポスト工業化社会の「リスク社会化」を提起し、やはり現代社会論に欠かせない本となった。
2011年度
日本における小集団エスノグラフィーの古典。「一昔前の日本の下流社会文化」研究と言ってよいが、著者の方法論や着眼点に学ぶものが多い。「カミカゼ・ライダース」という題名で世界で翻訳されている。
ホワイト『ストリート・コーナーソサエティ』(有斐閣)
フィールドワーク調査、移民コミュニティ研究、若者文化研究など、いろいろな分野の元祖といえる作品。とくに自分がフィールドワークをやってみたい者は、大学院生だった著者がフィールドにどのように入っていったが詳細に記されているので、非常に参考になる。
ブルデュー「ディスタンクシオン」(藤原書店)
社会学調査と構造主義的分析を合体させたアプローチは、階層構造分析や教育社会学などに大きな影響を与えた。格差社会を論じるうえでも、現代社会学においても、現在では欠かせない本。
サッセン「労働と資本の国際移動」(岩波書店)
グローバリゼーションと移民労働者の問題を論じた本だが、アメリカで移民労働者が占めている位置を日本では非正規雇用の若者が担っていることを考えると、現代日本に示唆に富む。
マルクス「資本論 第1巻」(文庫本が各出版社より)
昨年もとりあげたが、現代のすべての社会理論の基礎ともいえる。「時間の比較社会学」を理解するうえで欠かせない。
真木悠介(見田宗介)「時間の比較社会学」(岩波現代文庫)
日本が生んだきわめて独創的な社会学者の代表的著作。著作としては同じ著者の「気流の鳴る音」(ちくま学芸文庫)のほうが読みやすく感動的だが、学問的形式が整っているのでこちらにした。マルクスの物象化概念を独創的に応用。
ロールズ「正義論」(紀伊国屋書店)
現代アメリカの福祉政策の正統性を哲学的に基礎付けた、アメリカ公共哲学の古典。長らく翻訳が待たれていたが(試訳はあったが)、ようやく正式の翻訳がでた。
ノージック『国家・市場・ユートピア』(木鐸社)
ロールズのライバルで、「新自由主義の哲学的元祖」とよばれる古典。一種の思考実験だが、生命倫理や法哲学、アニメ批評などにも影響を与えた。
網野善彦『無縁・公界・楽』(平凡社ライブラリー)
中世史の本だが、社会学の都市論や社会運動論、民俗学、宗教学、経済学、はては宮崎駿のアニメにまで影響を与えた本。資本主義や市場経済が、歴史的にどういう起源から始まったかという観点を、まったく違う視点から与えてくれる。
ハーバーマス「公共性の構造転換」(未来社)
メディアと政治意識の関係を、ヨーロッパ史の事例と哲学者たちの思想を交えて論じた社会学・政治学の古典。一種のメディア論、公共哲学論としても読める。
ギデンズ「右派左派を超えて」(而立書房)
イギリス労働党ブレア政権の「社会的包摂」政策を基礎付けた社会学者の政治論。現代政治の論じ方の基礎となる。
マクルーハン「グーテンベルグの銀河系」(みすず書房)
名著というよりあまりに独特な本。メディア研究の元祖であり、現代に至るまでほとんどすべてのメディア論に影響を与えているが、およそ他人がマネのできない本。
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