アカデミックライティング
シラバス (2012年春学期)
上記のような論文作成の場合、文章の上手下手は、はっきりいって二次的な問題でしかない。もっとも重要なのは、論文の目的と主題の設定が明確であるか否か、書き手がどれだけその主題にそって内容を展開できているか否かである。そのためここでは、テーマ設定や学問的方法の選び方、調査方法など、文章作成以外の部分に重点を置く。
論文の作成は実技であり、書かないかぎり上達しない。最終的には、論文を一本作成することが要求される。その作成と同時進行で、中間発表をまじえつつ講義を進めてゆく。受講者は、受講初期の段階でテーマを決め、論文作成の過程に一歩づつ先立つかたちで展開される講義をアドバイスとして、自分の作業を進めてゆくことになる。したがって、この科目では基本的に主役は受講者自身である。積極的な意欲のある人に、受講していただきたい。
斉藤孝『増補 学術論文の技法』(日本エディタースクール出版部)
澤田昭夫『論文のレトリック』(講談社学術文庫)
ウンベルト・エコ『論文作法』(而立書房)
そのため、初回の講義のさい、自分の研究テーマを書いて持参してもらいたい。A4一枚程度でけっこう。 広い意味で社会学系ないし近代史学系のテーマであれば、近現代社会のさまざまな問題を研究してもらってかまわない。ただし、技術系の研究の指導はできないので、そのつもりで受講していただきたい。
履修者は論文指導の前提となる社会学の予備知識を必要とするので、すでに担当者の講義「現代社会理論」を履修ないし聴講した者に限定したい。また受講者自身に、あらかじめ書きたいテーマが漠然とでもないと、受講しても無意味になるかもしれない。
なお、担当者の研究会2(論文指導)を履修する者は、一度はこの講義を受講しておくことが望ましい。
まず、この講義の基本的コンセプトを話す。論文作成の目的、意義、そして一般の文章とのちがいなどを説明する。
第2回 テーマ
この回では、「テーマ」について講義する。テーマの設定は、問題と対象を定め、自己の意欲と、論文としての実現可能性の接点である。漠然とした疑問や好奇心を、具体的なかたちにしてゆくための注意を学ぶ。
第3回 方法
この回では、「方法」について講義する。思ったことを、ただ書き連ねても論文にはならない。自己のテーマを、既存の学問的手法や理論を組み合わせつつどのように展開するかを考える。
第4回 調査
この回では、「調査」について講義する。調査には、テーマにみあった方法と道具があり、そのための一応のガイドを示す。
第5回 実習
この回では、文献調査のためのやり方を図書館などを回って実習する。
第6回 仮説と計画
この回では、「仮説と計画」について講義する。仮説や計画とは、つまるところ自分のテーマや手法が実現可能か否か、自分がテーマをどれだけ理解しているかを検証する機会である。
第7回 発表
この回では、口頭発表のやり方を講義する。
第8回 中間発表
この回では、中間発表を行なわせる。この時までに、受講者はテーマと計画を立案すること。
第9回 中間発表
この回では、第二回の中間発表を行なわせる。
第10回 構成
この回では、「構成」について講義する。論文の出来は、ほとんど8割は構成で決る。テーマや叙述に適合した構成は、説得力の有無を左右する。
第11回 叙述
この回では、「叙述」について講義する。叙述といっても文章の言回しではなく、論文に使う概念設定や理論の選択、ストーリー性の加味などを指す。調査で得られた事実をまとめあげるまでの手法を学ぶ。 また先行研究への批判と、方法論についての記述についても述べる。
第12回 中間講評
この回では、中間講評を行なう。受講者は、この時までに構成表を提出すること。
第13回 中間講評
この回では、中間講評の第二回を行う。
第14回 文章
この回では、「文章」について講義する。論文においても、文章は重要なことはいうまでもない。最終的には個々の感性によるしかない文章だが、明快な記述の一般的なやり方を示唆する。要約と表題についても触れる。
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